結果が問題なのではない。真の課題は、それをどう生かすかだ。
政権が過渡期にあるとき、通常、重要な施策(勿論緊要なものは例外だが)はひとまず様子見を決め込み、選挙結果に直接影響しそうなデータを行政側が出すこと控える。
しかし、今週はこれが2つ続いた。
1 人事院勧告の完全実施の決定。
国家公務員給与、年15万円減 人事院勧告を完全実施
2 全国学力調査の結果発表。
学力テスト、上位県の固定化鮮明 09年度、文科省が結果公表
学力テストは何の為か
私はこれを、中央官僚が民主党側にすり寄ったと見た。民主党の支持母体同盟傘下の「官公労」にしてみれば、給与下げなんて呑めるはずがない。しかし、民主党政権として考えると、政権交代後に勧告無視の姿勢をとれば、労組に弱腰と叩かれるのは目に見えている。自民政権の間に決定すれば、自民党に責任転嫁できる。また、公務員給与を下げることは、財務省も自民党も異論はない。民主党は「官公労」に対し「政権末期のどさくさにやられてしまった」と言い訳すればよい。
まっ、こんなもんだろう。
やっかいなのは2の「全国学力調査の結果発表。」だ。
「格差の固定化」「経済力と学力との間に相関関係がある」
これを投票日3日前に敢えて公表することに、どのような意図があるのだろうか。そして、それはどの政党に有利に働くのだろうか。
「経済力と学力との間に相関関係がある」これは地域間で見ても、個々の家庭で見てもはっきりしている。これは、誰でも知っており、薄々感づいていても敢えて言葉に出さなかっただけのことだ。
全体の傾向としては、貧しい地域や家庭は、親の意識が低く基本的生活習慣の定着も不完全で満足な教育を受けられず低学力で低学歴に甘んじ、、社会の底辺層を形成する。経済的に恵まれている地域や家庭では、親の意識が高く、基本的生活習慣が定着しており豊かな教育を受け学力が高くなり、高学歴を得て、社会の中層から上層を形成する。
問題はここからなのだ。貧しい人を更に貧しくし、生活困窮度を高めた後でこれらの現実を白日の下に晒した。そしてその後、政治はどうしたか。これからどうしようとしているのかだ。
根本は経済的な問題なのだ。
教育困難地域・校に手厚い予算配慮をしたのだろうか、手厚い人員配置をしたのだろうか。財政難の折とはいえ、毎年数十%規模の教育予算削減をし、どこかの知事のように教育委員会批判、公務員批判の先頭に立ち与論を煽るだけで問題は解決するのだろうか。
「とても子どもの教育どころではない」と言う状況の経済的困窮家庭への生活保護費、就学援助費の増額、基準の緩和、一人親家庭への援助の拡充等はなされたのだろうか。
答えは全て「NO」だ。為されたことは全て逆のことだ。援助費の減額、規準の厳格化、廃止等が続いた。
結局、この学力調査でなされたことは、経済的困難地域・家庭の保護者児童の劣等感を裏打ちし、上層への階層移動の希望を早期に諦めさせ、階層固定化の方向へと社会意識を誘導することだった。そして、「早寝、早起き、朝ご飯」が困難な家庭に手を差し伸べることなく、「自己責任」と罵倒することでしかなかった。
家庭と学校を批判し、そちらに注意を引きつけておき、まんまと政治の責任から免れたのだ。
※ 最後に、あまり書かれないことだが、学力テスト日本一の秋田県だが、大学進学率は全国でも最下位クラスである。これは、秋田の子ども達の学力が高校になると低下するのではない。むしろ、平均よりも良いくらいだ。大学へ進学したくても、する学力があってもできないのだ。
義務教育段階では、行政や教師家庭の頑張りで何とかなる。親が現在の生活を切り詰め塾やお稽古事の金は捻出できる。大学でも自宅通学なら子どももアルバイトをしながらできるかも知れない。しかし、遠隔地へ下宿するとなると話は別だ。国立大学でも月に20万の仕送りが必要だ。私学となれば更に額は嵩む。これを毎月楽に捻出できる家庭はそうは多くあるまい。また、県下に自宅通学可能な有力大学もそう多くないし、大学卒業後に働く仕事も少ない。大学進学を困難にする要素はあっても、進学へのモチベーションを高める要素は何一つ無いのだ。
国や銀行の教育ローンという制度もある。しかし、就職状況が格段に厳しい現在、卒業後に就職できる保証は何一つ無い。就職し返済できなければ、卒業と同時に債務不履行のブラックリストに載り、新たなローンも組めず、クレジットカードも契約できなくなる。この経済的環境の中で「借りる」という選択はリスクが高すぎる。
都会なら、学力があれば国立大学、更に経済的に恵まれていれば有力私大、学力に多少の不安があっても、その他の私大という選択肢がある。そして、それは自宅通学なら可能だ。学力テスト結果では下位グループに属するの大阪だが、大学進学率は高い。短大、専門学校をも含めればその数値は更に跳ね上がる。つまり、大都市圏の自宅通学可能範囲に住んでいれば、学力が無くても、ときには意欲さえもなくても、後期高等教育を受けることができる。
しかし、地方居住者は、学力と意欲があっても、家庭に経済力がなければ、進学の道は閉ざされる。遠隔地での下宿となると親も本人も大変だ。学費のほかに生活費がいる。それがネックとなって、学力も意欲もある若者達が、先の希望を絶たれているとしたら、個々の問題ではなく、国家的な大きな損失だ。
貸付でなく給付形式の奨学金を、そして下宿代を含めたトータルな生活費までカバーする奨学金が必要だ。
これが実現したら初めて秋田県は「学力全国一」になれる。もちろん、県や市レベルでできる施策ではない。国が考える事だ。
何処に生まれたかで、若者の将来が制限されてはならない。
以下は文部科学省の実施した「平成20年度学校基本調査」のテータから割りだした大学進学率の推計値
推計値というのは大学を4年制全日制の大学に限定したことと、その年の卒業生数が見当たらなかったので全日制の3年生の数値を使って算出したためだ。正確ではないが傾向は見て取れるだろう。
県名 大学進学者 高三男 高三女 大学進学率
北海道 16,319 24,446 23,626 33.95%
青森 4,800 6,961 6,633 35.31%
岩手 4,416 6,789 6,640 32.88%
宮城 8,975 10,745 10,498 42.25%
秋田 3,662 5,163 4,986 36.08%
山形 4,579 5,865 5,849 39.09%
福島 7,421 10,549 9,985 36.14%
茨城 12,573 13,534 12,956 47.46%
栃木 9,048 9,793 9,065 47.98%
群馬 8,162 8,816 8,376 47.48%
埼玉 26,6022 8,046 25,700 49.50%
千葉 21,986 23,627 22,792 47.36%
東京 57,063 47,880 49,327 58.70%
神奈川 32,094 30,135 29,874 53.48%
新潟 9,279 11,163 10,797 42.25%
富山 4,196 4,608 4,516 45.99%
石川 4,715 5,139 5,226 45.49%
福井 3,673 3,886 3,924 47.03%
山梨 4,400 4,586 4,169 50.26%
長野 7,984 9,875 9,659 40.87%
岐阜 9,105 9,559 9,223 48.48%
静岡 15,879 16,869 16,155 48.08%
愛知 30,854 29,865 29,776 51.73%
三重 7,547 8,513 8,255 45.01%
滋賀 5,756 6,381 6,141 45.97%
京都 12,921 11,199 11,475 56.99%
大阪 33,082 34,206 33,781 48.66%
兵庫 24,429 22,770 23,347 52.97%
奈良 5,967 6,222 6,017 48.75%
和歌山 4,200 4,982 4,923 42.40%
鳥取 1,843 2,942 2,859 31.77%
島根 2,534 3,574 3,355 36.57%
岡山 8,014 8,927 8,907 44.94%
広島 13,448 12,098 12,150 55.46%
山口 4,441 6,004 5,857 37.44%
徳島 3,358 3,601 3,507 47.24%
香川 3,823 4,336 4,343 44.05%
愛媛 6,059 6,386 6,061 48.68%
高知 2,439 3,432 3,581 34.78%
福岡 19,329 21,404 21,156 45.42%
佐賀 3,214 4,683 4,437 35.24%
長崎 5,364 7,305 7,291 36.75%
熊本 6,193 8,624 8,375 36.43%
大分 4,112 5,706 5,384 37.08%
宮崎 3,881 5,686 5,537 34.58%
鹿児島 5,283 8,746 8,940 29.87%
沖縄 4,969 7,792 7,715 32.04%
Excite エキサイト : 社会ニュース
しかし、今週はこれが2つ続いた。
1 人事院勧告の完全実施の決定。
国家公務員給与、年15万円減 人事院勧告を完全実施
2 全国学力調査の結果発表。
学力テスト、上位県の固定化鮮明 09年度、文科省が結果公表
学力テストは何の為か
私はこれを、中央官僚が民主党側にすり寄ったと見た。民主党の支持母体同盟傘下の「官公労」にしてみれば、給与下げなんて呑めるはずがない。しかし、民主党政権として考えると、政権交代後に勧告無視の姿勢をとれば、労組に弱腰と叩かれるのは目に見えている。自民政権の間に決定すれば、自民党に責任転嫁できる。また、公務員給与を下げることは、財務省も自民党も異論はない。民主党は「官公労」に対し「政権末期のどさくさにやられてしまった」と言い訳すればよい。
まっ、こんなもんだろう。
やっかいなのは2の「全国学力調査の結果発表。」だ。
「格差の固定化」「経済力と学力との間に相関関係がある」
これを投票日3日前に敢えて公表することに、どのような意図があるのだろうか。そして、それはどの政党に有利に働くのだろうか。
「経済力と学力との間に相関関係がある」これは地域間で見ても、個々の家庭で見てもはっきりしている。これは、誰でも知っており、薄々感づいていても敢えて言葉に出さなかっただけのことだ。
全体の傾向としては、貧しい地域や家庭は、親の意識が低く基本的生活習慣の定着も不完全で満足な教育を受けられず低学力で低学歴に甘んじ、、社会の底辺層を形成する。経済的に恵まれている地域や家庭では、親の意識が高く、基本的生活習慣が定着しており豊かな教育を受け学力が高くなり、高学歴を得て、社会の中層から上層を形成する。
問題はここからなのだ。貧しい人を更に貧しくし、生活困窮度を高めた後でこれらの現実を白日の下に晒した。そしてその後、政治はどうしたか。これからどうしようとしているのかだ。
根本は経済的な問題なのだ。
教育困難地域・校に手厚い予算配慮をしたのだろうか、手厚い人員配置をしたのだろうか。財政難の折とはいえ、毎年数十%規模の教育予算削減をし、どこかの知事のように教育委員会批判、公務員批判の先頭に立ち与論を煽るだけで問題は解決するのだろうか。
「とても子どもの教育どころではない」と言う状況の経済的困窮家庭への生活保護費、就学援助費の増額、基準の緩和、一人親家庭への援助の拡充等はなされたのだろうか。
答えは全て「NO」だ。為されたことは全て逆のことだ。援助費の減額、規準の厳格化、廃止等が続いた。
結局、この学力調査でなされたことは、経済的困難地域・家庭の保護者児童の劣等感を裏打ちし、上層への階層移動の希望を早期に諦めさせ、階層固定化の方向へと社会意識を誘導することだった。そして、「早寝、早起き、朝ご飯」が困難な家庭に手を差し伸べることなく、「自己責任」と罵倒することでしかなかった。
家庭と学校を批判し、そちらに注意を引きつけておき、まんまと政治の責任から免れたのだ。
※ 最後に、あまり書かれないことだが、学力テスト日本一の秋田県だが、大学進学率は全国でも最下位クラスである。これは、秋田の子ども達の学力が高校になると低下するのではない。むしろ、平均よりも良いくらいだ。大学へ進学したくても、する学力があってもできないのだ。
義務教育段階では、行政や教師家庭の頑張りで何とかなる。親が現在の生活を切り詰め塾やお稽古事の金は捻出できる。大学でも自宅通学なら子どももアルバイトをしながらできるかも知れない。しかし、遠隔地へ下宿するとなると話は別だ。国立大学でも月に20万の仕送りが必要だ。私学となれば更に額は嵩む。これを毎月楽に捻出できる家庭はそうは多くあるまい。また、県下に自宅通学可能な有力大学もそう多くないし、大学卒業後に働く仕事も少ない。大学進学を困難にする要素はあっても、進学へのモチベーションを高める要素は何一つ無いのだ。
国や銀行の教育ローンという制度もある。しかし、就職状況が格段に厳しい現在、卒業後に就職できる保証は何一つ無い。就職し返済できなければ、卒業と同時に債務不履行のブラックリストに載り、新たなローンも組めず、クレジットカードも契約できなくなる。この経済的環境の中で「借りる」という選択はリスクが高すぎる。
都会なら、学力があれば国立大学、更に経済的に恵まれていれば有力私大、学力に多少の不安があっても、その他の私大という選択肢がある。そして、それは自宅通学なら可能だ。学力テスト結果では下位グループに属するの大阪だが、大学進学率は高い。短大、専門学校をも含めればその数値は更に跳ね上がる。つまり、大都市圏の自宅通学可能範囲に住んでいれば、学力が無くても、ときには意欲さえもなくても、後期高等教育を受けることができる。
しかし、地方居住者は、学力と意欲があっても、家庭に経済力がなければ、進学の道は閉ざされる。遠隔地での下宿となると親も本人も大変だ。学費のほかに生活費がいる。それがネックとなって、学力も意欲もある若者達が、先の希望を絶たれているとしたら、個々の問題ではなく、国家的な大きな損失だ。
貸付でなく給付形式の奨学金を、そして下宿代を含めたトータルな生活費までカバーする奨学金が必要だ。
これが実現したら初めて秋田県は「学力全国一」になれる。もちろん、県や市レベルでできる施策ではない。国が考える事だ。
何処に生まれたかで、若者の将来が制限されてはならない。
以下は文部科学省の実施した「平成20年度学校基本調査」のテータから割りだした大学進学率の推計値
推計値というのは大学を4年制全日制の大学に限定したことと、その年の卒業生数が見当たらなかったので全日制の3年生の数値を使って算出したためだ。正確ではないが傾向は見て取れるだろう。
県名 大学進学者 高三男 高三女 大学進学率
北海道 16,319 24,446 23,626 33.95%
青森 4,800 6,961 6,633 35.31%
岩手 4,416 6,789 6,640 32.88%
宮城 8,975 10,745 10,498 42.25%
秋田 3,662 5,163 4,986 36.08%
山形 4,579 5,865 5,849 39.09%
福島 7,421 10,549 9,985 36.14%
茨城 12,573 13,534 12,956 47.46%
栃木 9,048 9,793 9,065 47.98%
群馬 8,162 8,816 8,376 47.48%
埼玉 26,6022 8,046 25,700 49.50%
千葉 21,986 23,627 22,792 47.36%
東京 57,063 47,880 49,327 58.70%
神奈川 32,094 30,135 29,874 53.48%
新潟 9,279 11,163 10,797 42.25%
富山 4,196 4,608 4,516 45.99%
石川 4,715 5,139 5,226 45.49%
福井 3,673 3,886 3,924 47.03%
山梨 4,400 4,586 4,169 50.26%
長野 7,984 9,875 9,659 40.87%
岐阜 9,105 9,559 9,223 48.48%
静岡 15,879 16,869 16,155 48.08%
愛知 30,854 29,865 29,776 51.73%
三重 7,547 8,513 8,255 45.01%
滋賀 5,756 6,381 6,141 45.97%
京都 12,921 11,199 11,475 56.99%
大阪 33,082 34,206 33,781 48.66%
兵庫 24,429 22,770 23,347 52.97%
奈良 5,967 6,222 6,017 48.75%
和歌山 4,200 4,982 4,923 42.40%
鳥取 1,843 2,942 2,859 31.77%
島根 2,534 3,574 3,355 36.57%
岡山 8,014 8,927 8,907 44.94%
広島 13,448 12,098 12,150 55.46%
山口 4,441 6,004 5,857 37.44%
徳島 3,358 3,601 3,507 47.24%
香川 3,823 4,336 4,343 44.05%
愛媛 6,059 6,386 6,061 48.68%
高知 2,439 3,432 3,581 34.78%
福岡 19,329 21,404 21,156 45.42%
佐賀 3,214 4,683 4,437 35.24%
長崎 5,364 7,305 7,291 36.75%
熊本 6,193 8,624 8,375 36.43%
大分 4,112 5,706 5,384 37.08%
宮崎 3,881 5,686 5,537 34.58%
鹿児島 5,283 8,746 8,940 29.87%
沖縄 4,969 7,792 7,715 32.04%
Excite エキサイト : 社会ニュース
by taketombow | 2009-08-27 22:06 | ニースに接して