自閉症の子を持って

d0054692_21434952.jpg新潮新書 武部 隆・著
ISBN:4106101181 新潮社・刊
価格:714円(税込)

我が子が「自閉症」と診断されたとき親のショックは相当なものだろう。筆者は長男が2歳の時軽度の「自閉症」と診断された。その主治医の「適切な訓練を受ければ小学校入学時までに健常児と同じレベルになる」という言葉を信じて、奮闘が始まった。
 我が子によりよい教育を受けさせたいという親の気持ちはよく分かる。それを現実の行動として実践し実現させた記録。様々な障壁を乗り越えたその熱意はすばらしいと思う。障害児をもつ親にとっては勇気づけられる本だ。著者の熱意・行動力はもちろんだが、その職業(時事通信社記者)も微妙に効果的に働いたと思う。
 しかし、受け入れる側にとっては「大変だろうなあ」と思う。制度として、養護学校、障害児学級というものがある以上、通常学級に障害児が入学しても、原則として教員の加配はない。「担任一人に任せきりにせず、学校全体で支援を」とは言われるが、今時、教員が余っている学校なんて殆ど無い。嘘だと思ったら、試しに授業中に地域の学校の職員室を覗いてみるとよい。業務士(校務員)事務員しかいない学校はざらである。担任以外の教師は管理職を含めて、キレた児童、教室を脱走した児童、けが人病人の対応に追われ校内を走り回っている。結局、事実上担任一人で、抱え込むことになってしまうのだ。なぜ加配がないかというと、就学指導により「特別に支援が必要な児童は、障害児学級や養護学校へ行っているはず」というのだ。普通学級で障害をもつ児童生徒の受け入れをためらう理由の一つがここにある。だから、このように「特別支援」が必要な児童生徒を受け入れ該当児童の保護者の協力が得られないとき、しかも授業を維持するためにどうしても他の教師の補助が必要なときは、本来の職務を一時中断して駆けさせているのだ。つまり、自分の学級を自習にして駆けつけたり、本来(書類上は)他の指導をしている筈の教師を融通したりしているのだ。
 もちろん、受け入れ態勢がないからといって拒否すべきではないし、拒否できる社会情勢ではない。だが、その無理を学校現場だけに押し付けている現状は早急に改善すべきである。
重度の障害児の受け入に当たっては、人的な配慮ができるよう、社会的なコンセンサスの形成が一刻も早く望まれる。
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by taketombow | 2005-07-03 21:20 | 私の本棚から  

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