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上品チエ という歌手

上品チエという歌手を捜している。

正確に言うと、彼女が歌ってた「枯れ葉の中で」というEPレコードを聴きたいのだ。

 学生時代、初めての本格的登山は南アルプス赤石岳だった。

大垣発東京行きの夜行列車(今の「ムーンライトながら」)に乗り、深夜の金谷駅に着く。ホームで夜を明かした後、大井川鉄道の始発、静鉄バスを乗り継ぎ、畑薙第二ダム堰堤へ朝8時頃到着。そこから林道を歩き7時間で椹島登山小屋へ到着し宿泊。翌朝から赤石岳東尾根に取り付き、急登を7時間で赤石小屋へ到着宿泊。山頂に立ったのはその翌日、車中泊も入れると、実に3泊した後4日目の昼頃だった。

 登頂前夜、赤石小屋へ泊まったときのこと。

 樹林帯の急登を7時間の後、最大の山場を乗り越えた満足感と心地よい疲労感が体中を満たしていた。当時の赤石小屋は、工事現場の飯場の様だった。屋根を葺いていたのは、戦争中に富士見平へ墜落した陸軍輸送機の残骸から拾ってきたものだとか。水場の岩間から滲みだした水で割ったウイスキーの美味しかったこと。安物ウイスキーのブラック・ニッカがあれほど旨かったのは、後にも先にもこのときだけである。

 ウイスキーでほろ酔い気分になっていたとき、ラジオから流れていたのが、名前も知らない女性歌手が歌う「枯れ葉の中で」という歌だった。

「私は今枯れ葉の中を
 あてもなく歩いているの ひとりぼっちで
 通りすぎる冷たい風よ
 コートのえりにかくれて涙をふいた

  あの人のうしろ姿も
  見たくない 見たくない
  悲しくなるのさようなら

 通りすぎる冷たい風よ
 コートのえりにかくれて涙をふいた・・・」

この曲は頭の片隅でずっと気になっていたのだが、曲名と歌詞がはっきり分かったのは最近のことである。

先ず曲名がはっきりしなかった。

「枯れ葉の中で」「枯れ葉の中に」「枯れ葉の中へ」の内のどれだったかはっきりしない。歌手も「聞いたことのない女性歌手」くらいしか記憶にない。googleで検索し、曲名・歌手がそれぞれ「枯れ葉の中で」「上品チエ」であること、ジローズの杉田二郎の曲だったことが分かった。そして、ジローズ版が収録されたCDアルバムがamazonで入手できることを知り直ちに購入した。

でも、やはりオリジナルを聴きたい。

再びGoogleで検索したところ、京都で甲斐さんというカメラマン兼喫茶店主が経営する「ほんやら洞」という京都では超有名な喫茶店へ時折出入りしていることが分かった。同姓同名の別人かも知れないが、一度時間を作り訪れ直接店主に聞いてみたいと思っている。


このときの赤石岳登山には、更にもう一つ付け加えのエピソードがある。

アルコールが回り、すっかりできあがってしまった。ぼんやりと空を見ながら話をしていたところ、いつの間にか、月が欠けていることに気付いた。

「あれっ!月が欠けているぞ!」

誰かが叫んだ。

「馬鹿だな,月は時間とともに欠けるものだ。そんなこと、小学校で習っただろうが」

「そういえば、そうだったっけなあ。」

この言葉に、誰も異を唱えるものはいなかったから不思議だ。全員納得し、やがて眠りについた。

その日がちょうど月食だと知ったのは、下山してからのことだった。

ネットで探すと1971年8月7日の未明に、夜明け前の南西の空で皆既月食があったとある。

記憶とは時間がややずれるが、多分これを見たのだと思う。

by taketombow | 2005-08-21 22:49 | 私の山歩き  

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