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児童文学の中の障害者

児童文学の中の障害者_d0054692_14471996.jpg長谷川 潮 著 ぶどう社 刊
ISBN:4892401811
定価 2520 (2400+TAX)円

 この本は、児童文学を通して障害者と社会との関係を辿った児童文学史と言える。児童文学の中には、様々な形で障害者が登場する。それは、作者の意図の有無に関わらず、作者の障害者観を反映している。そして、それは読み手である児童にも、知らず知らずのうちに刷り込まれていく。
 そのような観点で児童文学を読み返すと、意外な部分が見えてくる。自分自身を含めて、障害者に対する見方考え方を再検討するには興味深い本である。ここで扱っているのは、
 ヨハンナ・スピリ 「ハイジ」 ローラ・インガルス・ワイルダー「大草原の小さな家」 ロバート・ルイス・スティーブンソン「宝島」 小川未明「赤い蝋燭と人魚」 斉藤隆介「でいたらぼう」 川端康成「美しい旅」 壺井栄「二十四の瞳」 竹山道雄「ビルマの竪琴」 カルロ・コッロディ「ピノキオ」 灰谷健次郎「兎の眼」 宮川ひろ「春駒の歌」 槻野けい「生きていくこと」
 等である。私は作者の主張に全面的に賛成するものではない。しかし、これらに目を通して、彼らがどの部分を問題にしているかをしることは、大いに価値ある事だと思う。

類書に
「知的障害をどう伝えるか」
児童文学のなかの知的障害児
山口洋史 著 文理閣 刊
ISBN:4892592994
定価1785(1700+TAX)円

がある。

 最近通常学級で学ぶ障害児が増えている。障害児学級が平成されている学校では、障害児学級で学ぶ子どもたちも,週に何時間か通常学級の子どもたちと一緒に学んでいる。しかし,障害児の「障害」を通常学級の子どもたちに伝えることは容易ではない。特に「障害」が目に見える形として現れない「知的障害」の場合はなおのことだ。 この本はその答えを児童文学の中に求め,それを通じて「障害」を考えている。「障害」をもつが故に「困った行動」をとる子どもたち。通常児に対してはただ我慢させるのではなく,正しい理解の下に納得させることが必要だ。

全7章のなかで

第2章 「障害」をどう考えるか
第3章 「社会」と「障害」をどう伝えるか
第4章 障害の「原因」をどう伝えるか
第5章 「困った行動」をどう伝えるか
第6章 「願い」をどう伝えるか
第7章 児童文学を用いた授業例

などは,読んで直ぐ家庭や教室で使えそうな内容だ。

by taketombow | 2005-12-04 15:44 | 私の本棚から  

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