給食費・払いたくない時代
「そんなことは許されない。けしからん事だ」
と非難する声が沸騰したものだ。
今は、
「払わずに済むなら私もしたい」
という声が上がる。一定の基準で選ばれた人が集う公的な場でもだ。
明らかに、私たちの規範意識が、低下している。
給食費・払いたくない時代
学校給食は、時代を映し出す鏡だ。給食の歴史には、その時々の社会状況や人々の意識が、くっきりと刻み込まれている。
学校給食は1889年(明治22年)、山形県鶴岡市の私立小学校で、子供たちにおにぎりを配ったのが最初とされる。世界大恐慌後、全国で実施されるようになった。戦時中は中止されたが、戦後間もなくアメリカからの脱脂粉乳などで復活した。いずれも欠食児童救済の色彩が強かった。
1970年代からは余剰米対策もあって米飯給食が取り入れれられた。やがて、豊かな時代となり、カフェテリア方式やランチルームでの給食の登場。給食の思い出は、世代の違いも示す。
80年代後半の臨時教育審議会では給食見直し論議があった。家庭の責任を問う「愛情弁当論」が展開された。規制緩和、個性尊重、自己責任論の延長にある主張だった。
そして今、食育基本法が制定され、食事の大切さが強調される一方で、かつてない事態が進行している。意図的な給食費滞納者の急増だ。
「切ないんです。子供は、なぜ先生が家に來るか分かるじゃないですか。胸を痛めていろのではないかと--」
逆に、「そうか、得をして、いるんだ」と思うようになるのもこわい、でも、督促せざるを得ない。宇都宮市教委学校健康課の担当者は嘆く。
同市の調査によると、昨年度までの5年間で滞納の小中学生は702人、滞納額は3289万円にのぼる。同市の給食費は小学校で月平均3932円、中学校4736円。それを指定の金融機関の口座に入金しない。
不況の影響も無視はできないが、「払えないのではなく、払いたくない」親が多いのが現在の特微だ。支払いを促すと、「給食費を払わなくても、給食を止められたことがない」「学校が勝手に給食を提供している」などの答えが返ってくる。滞納が親戚や知人に広がる傾向もある。
市は6月から督促キャンベーンを始めた。校長や教師が家庭訪間や電話で支払いを求めた。就学援助の相談に応じる、分割納入も認める、などの督促手引も作成された。それでも応じない悪質なケースについて、市は来週にも法的措置をとる。同様のことが各地で起きていろ。滞納によって、食材の質を落とした地域もある.
時代の鏡である給食は今、一部の親の希薄な規範意識を映し出している。
怒りというより悲しみの感情がわいてくる。
by taketombow | 2006-09-09 19:39 | ニースに接して