根性焼き

 地下鉄を降りて地上に上がったら、どっと汗が噴き出した。

 とにかく暑い。

のんびりとバス停へ足を向けていたら、向こうからバスがやってきたので小走りに走って乗り込んだ。運良く降車口のそばに空席があったので其処へ座った。

 通路を挟み反対側に若いやや小柄の女性が座っている。
青いジーンズに、白っぽいTシャツ、こざっぱりとした格好をしている。時折見かけるギャル系の服装とは縁遠い服装だ。ただ一つ気になるのが、目深に被った使い古したようなキャップだ。キャッブのため、表情は全く見えない。僅かに口元がみえるだけだが、まだ若い。多分10代の少女だろう。

 次のバス停で、老女が乗ってきた。
座るところはないかと辺りを見回すが、生憎座席は満席で空席はない。優先席は当然のこととして、OL風の若い女性とおじさんが狸寝入りを決め込んでいる。

 私が立とうかなと、鞄の取っ手を握り直したとき、その少女が席を立ち、さりげなく席を譲った。
そして、そのまま私の席の前にある降り口の棒を握りしめた。

 その手首を見て私はハッとした。手首に無数のリスカと根性焼きの跡。

 赤くなり、僅かに膨れ上がっている。

 生まれてから、おそらく20年足らず。彼女は凄まじい人生を生きてきたのだろう。
今までの彼女の身の上に何があったのか、これからどんな人生を生きていくのか。私には分からない。

 彼女が降りるまでに、遂に私は彼女の顔を正視することはできなかった。
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by taketombow | 2008-07-22 23:40 | 雑感  

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