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「児童虐待」 その後  日本一醜い親への手紙

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 児童虐待被害者のカミングアウト本。


 本書は、1997年に出版され話題となったが、その後絶版となった。
数ヶ月前、編集者の今一生さんから再版のお知らせを戴き予約した本が、昨日やっと届いた。
早速、紐解いたのだが、結局、数ページをパラパラッとめくっただけで、本を閉じてしまった。

もちろん、下らない云々の問題ではない。暗いのだ。余りにも暗く、救いもない。




 最近、児童虐待関連のニュースが毎日のようにマスコミを賑わしている。そして「識者」が「最近の若い親は・・」と分かったようなコメントを垂れ流す。

 しかし、私の見方では児童虐待はさほど急増はしていない。急増しているのは、その「認知件数」なのだ。「発生件数」ではない。社会の人権意識が高まり、子ども虐待を防ごうという機運が少しずつ芽生えてきたので、今まで見えてこなかったものが見えてきたのだ。考えようによっては、良い傾向の一つとも考えられる。
 同じ、或いはもっと酷いことをしても、昔は犯罪どころか虐待ともとらえられなかった。借金返済のため、娘を売春宿に売り飛ばしたら、現在はとんでもない犯罪であるが、昔は、美談とされ、戯曲にさえもなっている。


以下は以前に読んだ時のレビュー

 以前に同じ出版社から、『完全家出マニュアル』なる本が出版されたとの報道を目にしたことがある。
 そのときは、
「利益だけのためにこんな本を売り出すから、青少年の家出を助長してしまうんだ。」
と否定的な見方をしていた。しかし、この本(「日本一醜い親への手紙」)を読んだ後は考え方が変わった。

 「家出してでも良い。生きていてくれさえすれば。」
「家庭(それが「家庭」と呼ぶに値するかは別問題だが)に帰る  =親と共に暮らす ことが必ずしも幸せとは限らない」 と。

 この本は、親への憎しみを綴った9歳から81歳までの「子ども」からの手紙を、100人分収録したものだ。

多くは 児童虐待 それも親兄弟などの肉親からの、身体的暴力、精神的暴力、性的虐待、ネグレクト等々を受けた経験を、生々しく、或いは淡々と綴っている。

 子どもの時の記憶だ。「真実」とは違うかも知れない。でも、「そう感じた。そうとらえてしまった」ことは紛れもない事実なのだ。小さな頃に負った心の傷を(時には身体的な傷までも)今でも引きずって生きている。彼(彼女)らにとっては、紛れもない「事実」なのだ。

 中には、自分の今の不遇を親のせいにしている、自分勝手な手紙もある。でも、そのような「子」に育てたのは、その「親」だ。
 子どもは無論のこと大人でさえ、生きていくのが大変な時代。子どもの心からの辛さを自分の中で昇華できるのが、「大人」であることの条件なのだが、彼らにはそれが極めて困難なのだろう。

 彼らが名実ともに大人になれる日は何時やってくるのだろうか。

 彼らに心の底から伝えたい。後ろを振り返っても何も産まない!前を向いて生きろ! と。

 でも、もし自分のことだったら、そう思っていてもなかなか出来ないだろうなあ。


まもなくamazonでも購入できるようになる筈だが、部数は極めて少ないそうだ。
下記の編者や出版社に直接問い合わせた方が確実だろう。

編集 今一生 クリエーティブメディア 
http://www.createmedia.co.jp/yoyaku.html
出版 ノンカェイン・プロダクション
http://www2u.biglobe.ne.jp/~sumishi
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by taketombow | 2010-07-10 10:38 | 私の本棚から  

死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人

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死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人 池谷孝司・編/著 共同通信社・刊 1,400+TAX円


改めて「刑罰」の意味を考えさせられる本。

 「刑罰」は何のためにあるのか。社会防衛のための「見せしめ」、犯人の「更正」、それとも、被害者や社会の「処罰感情」を満足させるためだけなのか。

 この犯人は何の反省もなく「希望通り」に処刑された。これで見せしめになったのか。犯人が死を望んでいないとき、死刑は犯罪の大きな抑止力となり得るが、この場合はどうだったのか。そして、社会の処罰感情は充足されたのだろうか。

 この犯罪は、軽度発達障害が基底にあり、それを無視した養育により「愛着障害」を引き起こした結果だろうと、私は考えるが、本書を読みその思いはますます強くなった。本書に記述された母親の養育姿勢、母子関係等にその傾向が見られるような気がする。

 反省していない、むしろ死を望んでいる犯人に「望み通り」に「死刑」を執行することが、果たして最も正しい選択だったのだろうか。「間接自殺」を望む犯人に税金を使って、その手助けをしてやった。そういうことが言えないだろうか。

 護送車中での「不敵な笑い」は、何も彼が開き直っているからではない。アスペルガー、ADHD等の軽度発達障害では、相手も感情を読み取る、場の空気を読み取る、場に即した態度・表情をとることが極めて苦手なのだ。障碍のない人は、たとえ全く「反省」していなくても、「反省」した方がよい場面では、その雰囲気を読み取り、十分に「反省」できる。

 反省しているから減刑、反省の様子が全くないから求刑通りでは、このような発達障害者にとって極めて不利な状況となる。

 本書の最後にある元家裁調査官 藤川洋子氏の言葉が耳に残っている。

 「『反省』無き更正という方法があっても良いのではないか」

 再び社会に害を与えないようになるのならば、その方法も検討の余地はあるだろう。

 実母、大阪の姉妹の三人を殺害した犯行は事実であり、その責任は当然本人にとらせるべきだ。だから、死刑以外の選択肢は無かったのかもしれない。

 でも・・・・・・、


同じ事件を扱った図書に
我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人 小川善照・著 小学館・刊 1,800+TAX円

発達障害者の事件を扱った本に
自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の罪と罰 佐藤幹雄・著 洋泉社・刊 2200+TAX 円 がある。この本もおすすめ。

事件がある度に、強調されることだが、これらの発達障害があるから、事件を起こすのではない。これらの発達障害に対して適切な療育がなされてこなかったから、事件の加害者となってしまったのだ。

もう一つ、気になることがある。

これらの凶悪犯罪被疑者の障碍を極力隠そうとする傾向があることだ。それは、これらの障碍をもった人々から、自分たちまでがそのような犯罪の予備軍のように思われるので、(障碍名の報道は)極力やめて欲しいという願いが寄せられているからなのだが、実はそれだけではない。

 最近とみに高まっている「処罰感情への配慮」がある。明らかな障碍があり、責任能力なしと判断されたときには、裁判そのものが成立しなくなり、処罰を求める世論から検察は厳しい批判をうける。だから、できる限り、「責任能力なし」は避けたいのだ。

 上掲の「自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の罪と罰」の犯人は、自閉症とともに知的なハンディもあった。しかし、「責任能力あり」との鑑定を元に、裁判官、検察官、弁護士の言っていることの意味も分からないまま、裁判は進行し判決が下される。絞首刑となった彼は、最後まで何も分からないままだったのだろう。
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by taketombow | 2010-06-05 19:44 | 私の本棚から  

医療戦略の本質 マイケル・E・ポータ

d0054692_21565629.jpg医療戦略の本質 - 価値を向上させる競争 -  マイケル・E・ポータ&エリザベス・オルムステッド・ティスバーグ・著/山本雄士・訳 日経BP社・刊 2,800+TAX円

ある病気を、A医師は1ヶ月治療して全治させた。B医師は2回の治療で同様に全治させた。このときの医療コスト、医師の収入、患者の支払額は圧倒的にA医師の方が多い。
 しかし、「医療の価値」と言う点ではどうだろうか。B医師の方が患者の経済的、経済的以外の負担は遙かに少ない。医療費もこのような視点で考えるべきだと著者は主張する。

 究極の医療は「病にかからないこと」なのだから。

 医療費の算出もかかったコストを積み上げていく現在の方法ではなく、トータルな医療の価値に対して支払いをすべきだと。

 著者の「医療を再定義する」と名付けた医療戦略論を目の当たりにして、 これからの医療システムの在り方を世界中で真剣に考えるときが到来した、と強く感る。

 高度な専門性、複雑性から、突っ込んだ議論が避けられてきた医療システム論だが、もはや医療システムは、医療関係者だけで解決できる領域ではなく、 全人類の知恵の集大成を惜しみなく投入してこそ対応できる 極めて複雑な領域になってしまったのである。

 この包括的な医療戦略の取り組みを参考に、 国や地域がそれぞれの特性を十分に理解し 最大限に生かした医療システムを構築することが望まれる。
 
 日本は、それができるのだろうか。
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by taketombow | 2010-06-04 22:06 | 私の本棚から  

子育てを考える2冊

同じ著者による2冊。
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日本の子どもと自尊心 自己主張をどう育むか 佐藤淑子・著 中央公論新社・刊 740+TAX円

学習がふるわない子ども達(若者達)にことばをかけると、「どうせおれはバカだから・・」「どうせボクはやっても出来ないから・・」とハナから諦め、努力そのものを拒否する子どもが多い。

 「世の中にバカはいない!2種類の人間が存在するだけ。"怠け者"と"頑張れる奴" あなたはどっちなんだ?」

 そう問いかけるのだが・・・。

「自尊心(セルフエスティーム self-esteem )」 ・・自己を肯定的に評価し、満足できる

の少ない子ども達はどのようにして育ったのか、どうしたら彼、彼女たちの自尊心を高めることが出来るのか。

長年、子どもに関わる仕事を続けてきたが、このことは常に頭から離れない課題であった。
 社会に閉塞感が漂う中、行き着いた最悪の事態が、土浦駅前や秋葉原商店街での大量殺人事件であり、岡山駅ホーム突き落とし事件、厚生事務次官経験者殺人事件のような、やけくそ型の殺戮だ。

 今、切実に、自尊心を正しく育むことが必要とされている。しかし、家庭での子育てはそれを意識して為されているのだろうか、また、その意識と、子育ての結果とは関連はあるのだろうか。性差と自尊心と関係はあるのだろうか。
 
 謙虚さが賞賛される日本において、自尊心は常に歓迎されるとは限らない。そこに矛盾があるとしたら、自己主張できる子を育てるためにはどうすればいいのだろうか。また、個人主義を利己主義とはき違えて取り入れてしまったように、自尊心を独りよがりと間違えて受け容れられてしまう危険はないのだろうか。
 日本人独特の自尊心を考察し、教育学の視点から、保護者の価値観の影響や、子どもの成長との関わりを多くの実態調査をふまえ、豊富なデータから明らかにする。



こちらは、本書の10年近く前に出版されたもの、イギリスと日本の子育ての具体的な比較が中心になっている。ざっと目を通すと、前述の図書の理解は更に深まる
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イギリスのいい子日本のいい子 自己主張とがまんの教育学 佐藤淑子・著 中央公論新社・刊 680+TAX円
 
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by taketombow | 2010-05-15 09:14 | 私の本棚から  

「夢を持つ」「希望を語る」ということ

昨年度卒業式の式辞で触れた本。 児童書(中学生~高校生向け)
先が見えない時代、夢を持ちにくい時代。だからこそ、夢が必要なのだな。
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夢を持ってはいけません -目標達成力を身につける 佐々木宏・著 国土社・刊 1,200+TAX円

意表を突く書名に思わず、手に取りたくなる。そして、「何故だろうか。著者は何を言いたいのだろうか。」との問題意識をもったまま、読者は巻末まで一気に読み進む。

自分は何になったらいいのだろうか、何になれるだろうか。どうなるのだろうか。と、自分の将来に対して、少しでも考えたことのある子どもたちだったら、この本は適書だろう。
 しかし、そのような子ども達は、全体の何割いるのだろう。また、書名だけを見て「あっ、そうなんだ。希望を持ってはいけないんだ」と、何も考えず、素直に妙に納得されてしまって困る。
 
 この本を「思わず手に取る」そして「何気なくぱらぱらとめくる」そのような子どもに育てるのは、私たち大人の仕事だ。

 要は”「夢」を「夢」のままで終わらせてはいけない”ということ。「夢」に「日付」をいれるだけで「目標」になる。

具体的な方法を4つ述べている。
1 時間を大切にして努力すること。1日を86,400円(1秒=1円)と考えてみる。努力しても結果が出なかったら、方法、目標設定、真剣度のどれかに原因がある。
2 努力は孤独でない。結果が出なくても、自分の心の中では必ず何かが起こっている。
3 親友を沢山作ろうと思うな、真の友だちが一人いれば十分だ。
4 目標はメガピクセルで。できるだけ詳しく描け。
5 失敗を恐れるな。若い間は失敗も許される。「ガラスの自己肯定感」であってはならない。「真の自己肯定感」を育め。それは失敗を経験して育てられる。「成功」の反対語は「失敗」ではない。「成功」の反対語は「何もしない」だ。

子ども達だけでなく、職場や学校の朝会でのネタに使えそうな内容だ。
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by taketombow | 2010-05-15 08:48 | 私の本棚から  

映画「おとうと」と共依存(きょういぞん)

 先日、カミさんと映画を見た。夫婦のどちらかが55歳以上だと二人2000円で見ることができる。私は数年前その資格を得ている。

見たのは、

松竹映画「おとうと」。

山田洋次監督の最新作で、現代劇としては、10年ぶりの作品だ。

監督:山田洋次、脚本:山田洋次、平松恵美子
出演:吉永小百合、笑福亭鶴瓶、蒼井優、加瀬亮
公式サイトはここ。
http://www.ototo-movie.jp

 氏の作品に共通していることだが、一般人や社会の逸れ者のささやかな日常生活に潜む喜びと哀しみを、ユーモアとペーソスに溢れた上級の人間ドラマに仕立て上げている。何よりも「おとうと」鉄郎役の笑福亭鶴瓶がいい。ふしだらで、どうしようもないのだけど、憎めない男を好演していた。また、その姉・吟子役の吉永小百合も実に良い。慈愛に満ちた「日本の母」を見事に演じている。

 立派な兄、しっかり者の姉、放蕩者の弟。母に亡き後、「今度こそは」と約束する端から次々と問題を起こし、不始末をその都度尻ぬぐいしてきた。その吟子と鉄郎との姿を「家族の絆」として、温かく肯定的に描いている。公開してからほぼ1ヶ月経っていたが、座席はほぼ埋まっていた。観客の大多数は、私と同じ団塊かそれより上の世代だ。
 鉄郎は大阪で倒れ、民間のホスピスで吟子達に看取られながら最期の時を迎える。その見寄のない人々を受け容れ、最期を看取る民間ホスピスで働く人たちの様子もそれとなく描いている。

 笑い、涙、感動のある名品だと思うが、劇場が明るくなってから、何か心に違和感を感じた。


 「家族の絆」 なんて美しい言葉なんだろう。しかし、この名の下に、家族(多くの場合はその母)に犠牲が強いられ過ぎていないだろうか。
 確かに心情的には切っても切れないだろう。しかし、自己を(ときにはその子をも)犠牲にしてまでも、家族を助けなければいけないのだろうか。この映画はそれを美化し(暗に強いて)ているような気がしてならないのだ。

 女を騙し金を巻き上げ、その尻ぬぐいをさせたり、子(主人公からすると姪)の結婚式へ押しかけ泥酔して混乱させる。かなりの年齢になってから、性格行動は変わらないし変えられるものではない。不適切な表現ではあるが、この作品の中で主人公は「亡くなった」から良かったものの、生きていたらこれが延々と繰り返されるのだ。自分の築き上げた財産や、人脈が崩れてしまうのも我慢しなければならないだろうか。

 何よりも、吟子がせっせと世話を焼き尻ぬぐいをしていくことが、果たして鉄郎のためになっているのだろうか。

 良かれと思い相手のためにせっせと尽くすことが、却って相手をスポイルし、自分の無意識下でそのようにして相手をコントロールすることに喜びを感じる。それは共に滅びるまで続く。これを共依存(きょういぞん)という。鉄郎と吟子の関係は、「共依存」とみることはできないだろうか。


苦しいけれど、離れられない 共依存・からめとる愛 信田さよ子・著 朝日新聞出版・刊 1,600+TAX円
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「共依存・からめとる愛」の詳細・reviewはこちら
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by taketombow | 2010-03-07 18:49 | 私の本棚から  

立原正秋という作家

庭の木槿の花が満開だ。今年は、春先に刈り込まなかったので、花数が多く、一つ一つの花も大きい。
 毎年の夏、この花を見る度に思い出す作家がいる。
昭和55年に亡くなった立原正秋だ。代表作に「春の鐘」「冬の旅」「冬のかたみに」「幼年時代」「辻が花」等がある。
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特に「冬の旅」は、あおい輝彦の主演でテレビドラマ化されたので、微かに覚えている人も居るかも知れない。立原正秋は、在日二世の作家だが、生粋の日本人よりも日本人らしく、日本の伝統文化に精通した作家でもあった。

木槿はお隣りの韓国の国花でもある。薄くて純白の花弁と、花の中心部を彩る鮮やかな紅色は、韓国女性の民族衣装「チマ・チョゴリ」を連想させる。儚げに見えて結構強靱な花で、朝咲いて夕方閉じるが、一輪の花は数日から2週間くらい楽しめるそうだ。

More 今週の読書ノート(~08月23日
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by taketombow | 2009-08-23 20:54 | 私の本棚から  

首相の蹉跌

首相の蹉跌―ポスト小泉 権力の黄昏 清水真人・著 日本経済新聞社・刊 1900+TAX円

d0054692_21531127.jpg 自民党の細田幹事長が「国民の程度が低い」と発言し、すぐ撤回した。
国民程度低い?自民・細田氏が発言撤回
記事の本文にもあるように、最近の支持率低下によるいらだちから、つい本音が出たのだと思う。お世辞にも褒められた発言ではないが、結構当を得た発言だ。
 しかし、肝心なことを彼は忘れている。「この程度の国民」ということで最も利益を得てきたのは、当の自民党自身であるということだ。「この程度の国民」だったから、怒り、嘆き、呆れながら、それでもなお、自民党を支持し続けてきた。「この程度の国民」でなかったら、もっと前に自民党は下野していたかもしれない。
「この程度の国民に」心から感謝すべきであり、批判などもってのほかなのだ。

 コイズミ改革以降、、安部、福田と短命政権が続き、麻生現政権にも黄昏が迫っている。本書は、その部分に「なぜだ?」と切り込んだ本だ。
 国民はなぜ、小泉政権にあのような圧倒的な支持を与えたのか。その圧倒的な数の力を継承しながら、後継政権はなぜ、かくも脆く崩れ去ったのか。
 その鍵は党内統治と官僚の使い方にあったのだと筆者は指摘する。飴と鞭を巧みに使い分けて、官僚を旨く利用した小泉政権に比して、官僚批判だけを繰り返し挙げ句の果ては官僚による”自爆テロ”さえも招いてしまった後継政権における官僚の使い方を詳細に検証している。
 そして、それを招いたのは、、安部、福田共に大臣経験のなさが原因しているのではないかとも。

More 今週の読書ノート(~07月27日)
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by taketombow | 2009-07-27 06:15 | 私の本棚から  

本当に「今の若者は悪い!」のか

「少年犯罪が急増している。」
「少年犯罪の手口が凶悪化している。」
「今の若者はなにを考えているのか分からない。」
「不気味だ。」

この文脈から、少年法が改正され、厳罰化された。
私は、法を犯した少年達に対する厳罰化について、積極的には賛成しないが、絶対反対という立場はとらない。
大人でも子どもでも法は法。大人と同様な残虐な犯罪を故意に犯したとしたら、大人と同じ罰を受けるべきだ。「子どもだから」ということで全てが許されべきでは無い。

しかし、この少年法改正への一連の動きが、何のポリシーもなく、ただ

少年犯罪間増加、凶悪化 → 社会不安

という、感覚的なものだけで為されたものだとしたら、これは大きな間違いだ。次のデータを見ていただきたい。
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関西福祉科学大学教授、松宮満さんの論文

「青少年問題におけるステレオタイプ -「少年非行の凶悪化」をめぐって-」

で氏がまとめ上げたデータだ。少年犯罪は増えていなかったのだ。増えるどころか、団塊の世代の少年時代をピークに増えるどころか減少していたのだ。青少年人口の減少を考慮しても、その傾向は変わらない。

ではなぜ、私たちはかくも急増、凶悪化の不安に駆られるようになっているのだろうか。
その答えは、ここにあった。
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これは早稲田大学大学院の牧野智和氏が
「少年犯罪報道に見る『不安』 -「朝日新聞」報道を例にして-」
(「教育社会学研究 第78集」日本教育社会学会編 P129~P146)
で示したもの。
中心はマスコミの報道にあったのだ。確かに、
「最近安全になった」
「心配しなくても良い」

では、新聞は売れず、テレビも見られない。しかし、

「治安が悪化した」
「いつ自分が被害者になるか分からない。」
「我が子が加害者になるかも知れない」

とあれば、心配になり少しでも情報を集めようとして、新聞は読み、テレビも点ける。「安心だ」では儲からないが「不安」では多くのビジネスチャンスがある。

私たちはウマウマとそれに乗せられてしまったのだ。そしてその最大の被害者は??
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by taketombow | 2009-03-27 23:30 | 私の本棚から  

「世界中の人たちに愛されて」 平野さんの本

知人が本を出した。

「世界自由の人たちに愛されて」 ろう者ちひろママとダウン症たかひろ 平野千博・著 文芸社・刊 1,200+TAX円
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ろう者平野ちひろさんの、生い立ち、進学・就職・結婚そして次男たかひろ君の誕生を軸に、ちひろさんを支える様々な人々との交流を描いたもの。平野さんの奮闘ぶり、そして彼女の努力が次第に周囲を動かしていく様子が生き生きと描かれている。

この本を読んでもう少し詳しく知りたくなったことがある。

それは、お子さんの言語習得をどうしたかだ。

 聴覚に障碍を持った方の大部分は、言葉による言語にも不自由をされている場合が多い。それは、私たちが言語を身につけるとき、耳からの音に頼る部分が多いからだ。
 母親からのあやし、語りかけを聴きながら赤ちゃんは育つ。そしてそれを真似して言葉を発する。自分が発した言葉は自分にも聞こえる。赤ちゃんはそれを母親の発する言葉と比較しながら、少しずつ修正し、正しい発音を身に着けていく。言葉の意味についてもそうだ。
 両親共にろう者である場合、一般的にはどうするのだろうか。行政にそのような場合のサポートはあるのだろうか。それとも、親が必死になってそのサポートを探し求めなければならなかったのだろうか。


 今週の読書ノート(~03月15日)
なぜ無実の人が自白するのか DNA鑑定は告発する スティーブン・A・ドリズィン/リチャード・A・レオ・著 伊藤和子・訳 日本評論社・刊 2,000+TAX円
いっしょに考える 子ども虐待 小林登・監 川崎二三彦/増沢高・編著 明石書店・刊 2,000+TAX円
教育の社会学<常識>の問い方,見直し方 苅谷剛彦/濱名陽子/木村涼子/酒井朗・著 1,900+TAX円
「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき スコット・ペイジ・著 水谷淳・訳 2,400+TAX円
体罰はいかに処分されたか 行政文書における体罰と処分の研究 早﨑元彦・著 法律文化社・刊 3,500+TAX円
山頂はなぜ涼しいか 熱・エネルギーの科学 日本熱測定学会・編 東京化学同人・刊 1,300+TAX円
養育費政策にみる国家と家族 母子世帯の社会学 下夷美幸・著 勁草書房・刊 2,600+TAX円
子ども虐待時代の新たな家族支援 ファミリーグルーブ・カンファレンスの可能性 林浩康・著 明石書店・刊 3,000+TAX円
新版 データで読む家族問題 湯沢雍彦/宮本みち子・著 日本放送出版協会・刊 1,070+TAX円
いじめの連鎖を絶つ -あなたもできる「いじめ防止プログラム」 砂川真澄・編著 富山房インターナショナル・刊 1,600+TAX円
図表で見る 世界の社会問題2 OECD社会政策指標 貧困・不平等・社会的排除の国際比較 OECD・編著 高木郁朗・監訳 麻生裕子・訳 明石書店・刊 2,600+TAX円
図表でわかる子ども虐待 保育・教育・養育の現場で活かすために 才村純・著 明石書店・刊 2,500+TAX円
どこか<問題化>される若者たち 羽淵一代・著 恒星社厚生閣・刊 2,500+TAX円
暴走老人! 藤原智美・著 文芸春秋・刊 1,000+TAX円
まじめの崩壊 和田和樹・著 筑摩書房・刊 700円
アフリカ「貧困と飢餓」克服のシナリオ 二木光・著 農山漁村文化協会・刊 2,000+TAX円
貧困と思想 吉本隆明・著 青土社・刊 1,400+TAX円
物語としてのアパート 近藤祐・著 彩流社・刊 3,000+TAX円
大人の友情 河合隼雄・著 朝日新聞社・刊 1,200+TAX円
図書館利用の達人 インターネット時代を勝ち抜く 久慈力・著 現代書館・刊 1,600+TAX円
西洋製本図鑑 ジュゼップ・カンブラス・著 市川恵里・訳 岡本幸治・監 雄松堂出版・刊 6,600+TAX円
グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに 浜矩子・著 岩波書店・刊 735+TAX円
世界金融危機 開いたパンドラ 池田洋一・著 日本経済新聞社・刊 850+TAX円
進学格差 -深刻化する教育費負担 小林雅之・著 筑摩書房・刊 680+TAX円
子どもの「脳」は肌にある 山口創・著 光文社・刊 700+TAX円
キレル大人はなぜ増えた 香山リカ・著 朝日新聞社・刊 700+TAX円
悩みを聴く技術 <ディープ・リスニング>入門 ジェローム・リス・著 国永史子・訳 春秋社・刊 1,700+TAX円
健康な歯を一生守るやさしい方法 歯みがきだけで虫歯や歯周病が防げない本当の理由 河田克之・著 ソフトバンク・クリエイティブ・刊 952+TAX円
「流れる臓器」血液の科学 血球たちの姿と働き 中竹俊彦・著 講談社・刊 820+TAX円
「病気の値段」の怖い話 有村秀明・著 講談社・刊 838+TAX円
慢性疲労は首で治せる! 松井孝嘉・著 角川書店・刊
医者を"殺すな!" 塚田真紀子・著 日本評論社・刊 11,800+TAX円
新版 再現!巨大隕石衝突 6500万年前の謎を解く 松井孝典・著 1,200+TAX円
蝶の道 -Butterflies- 海野和男・著 東京農工大学出版会・刊 3,600+tax円
ビジュアル探検図鑑 日本列島 猪郷久義・著 岩崎書店・刊 6,800+TAX円
おもしろサイエンス 照明の科学 日刊工業新聞社・刊 1,500+TAX円
図解雑学 有機ELと最新ディスプレイ技術 齋藤勝裕・著 ナツメ社・刊 1,480+TAX円
トコトンやさしい 機能メッキの本 榎本英彦/松村宗順・著 日刊工業新聞社・刊 1,400+TAX円
もっと知りたい旅客機の疑問50 秋本俊二・著 ソフトバンク・クリエィティブ・刊 952+TAX円
雪山の100のリスク 近藤謙司・著 山と渓谷社・刊 1,700+TAX円
芥川賞を取らなかった名作たち 佐伯一麦・著 朝日新聞社・刊 780+TAX円
愛と痛み 死刑をめぐって 辺見庸・著 毎日新聞社・刊 1,600+TAX円
グーグル Google 既存ノ゜ビジネスを破壊する 佐々木俊尚・著 文藝春秋・刊 760+TAX円 
君の夢はもう見ない 五條瑛・著 集英社・刊 1,800+TAX円
シャープを創った男 早川徳次伝 平野隆彰・著 日経BP社・刊 1,800+TAX円
エンジン・サマー ジョン・クロー・著 大盛り望・訳 扶桑社・刊 933+TAX円
異邦人の夜 梁石日・著 毎日新聞社・刊 1,800+TAX円
聖家族 古川日出男・著 集英社・刊 2,600+TAX円
樹霊の塔 伊集院大介の聖域 栗本薫・著 1,600+TAX円
鳥辺野にて 加門七海・著 光文社・刊 514+TAX円
默星録〈1〉やがて世界が燃え尽きる 荻野目悠樹・著 早川書房・刊 740+TAX円
李白 巨大なる野放図 宇野直人/江原正士・著 平凡社・刊 1,900+TAX円
杜甫 偉大なる憂鬱 宇野直人/江原正士・著 平凡社・刊 1,900+TAX円
ダリアハウスの陽気な幽霊 キャロライン・ヘインズ・著 東京創元社・刊 1,160+TAX円
鏨師 平岩弓枝・著 文芸春秋・刊 533+TAX円
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by taketombow | 2009-03-18 21:35 | 私の本棚から