カテゴリ:私の本棚から( 48 )

 

児童文学の中の障害者

d0054692_14471996.jpg長谷川 潮 著 ぶどう社 刊
ISBN:4892401811
定価 2520 (2400+TAX)円

 この本は、児童文学を通して障害者と社会との関係を辿った児童文学史と言える。児童文学の中には、様々な形で障害者が登場する。それは、作者の意図の有無に関わらず、作者の障害者観を反映している。そして、それは読み手である児童にも、知らず知らずのうちに刷り込まれていく。
 そのような観点で児童文学を読み返すと、意外な部分が見えてくる。自分自身を含めて、障害者に対する見方考え方を再検討するには興味深い本である。ここで扱っているのは、
 ヨハンナ・スピリ 「ハイジ」 ローラ・インガルス・ワイルダー「大草原の小さな家」 ロバート・ルイス・スティーブンソン「宝島」 小川未明「赤い蝋燭と人魚」 斉藤隆介「でいたらぼう」 川端康成「美しい旅」 壺井栄「二十四の瞳」 竹山道雄「ビルマの竪琴」 カルロ・コッロディ「ピノキオ」 灰谷健次郎「兎の眼」 宮川ひろ「春駒の歌」 槻野けい「生きていくこと」
 等である。私は作者の主張に全面的に賛成するものではない。しかし、これらに目を通して、彼らがどの部分を問題にしているかをしることは、大いに価値ある事だと思う。

類書に
「知的障害をどう伝えるか」
児童文学のなかの知的障害児
山口洋史 著 文理閣 刊
ISBN:4892592994
定価1785(1700+TAX)円

がある。

 最近通常学級で学ぶ障害児が増えている。障害児学級が平成されている学校では、障害児学級で学ぶ子どもたちも,週に何時間か通常学級の子どもたちと一緒に学んでいる。しかし,障害児の「障害」を通常学級の子どもたちに伝えることは容易ではない。特に「障害」が目に見える形として現れない「知的障害」の場合はなおのことだ。 この本はその答えを児童文学の中に求め,それを通じて「障害」を考えている。「障害」をもつが故に「困った行動」をとる子どもたち。通常児に対してはただ我慢させるのではなく,正しい理解の下に納得させることが必要だ。

全7章のなかで

第2章 「障害」をどう考えるか
第3章 「社会」と「障害」をどう伝えるか
第4章 障害の「原因」をどう伝えるか
第5章 「困った行動」をどう伝えるか
第6章 「願い」をどう伝えるか
第7章 児童文学を用いた授業例

などは,読んで直ぐ家庭や教室で使えそうな内容だ。
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by taketombow | 2005-12-04 15:44 | 私の本棚から  

こどもの安全を考える本3冊

 小さな子どもを巡る悲惨な事件が連続している。

凶悪犯罪の発生比率は60年代(我々団塊の世代の少年期)の方が圧倒的に多い(「教育不信と教育依存の時代」広田 照幸 著)が、社会構造・環境の変化により相対的に子どもの価値が高まった(?)ためか、子どもの事件・事故は殊更頻繁に詳細に報道されるようになり、社会不安も増大している。勿論、私はこの傾向を批判的には捉えていない。子どものことを真剣に考える風潮が出てきたことは好ましいことだと思うのだ。

しかし、それは本当だろうか。私たちの社会は真剣に子どものことを考えているのであろうか。建前はともかく、大人の都合だけで済んでいる部分が多すぎないだろうか。

これらを考える3冊だ。


「犯罪は「この場所」で起こる」
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小宮 信夫 著
ISBN:4334033199 光文社 刊
定価 756 (720+TAX)円

犯罪抑止のためには原因追求だけでなく、犯罪機会を減らすことを考えていこうというものである。物的環境や人的環境を整え犯罪機会を減らす社会作りを提案している。「そこに財布が無かったら盗らなかった。財布を置いた奴が悪い」「門が閉まっていれば入らなかった。門が開いていたことが悪い」的な考え方は嫌いだ。置いてあろうが無かろうが、開いていようが閉まっていようが、ものを盗ることはいけないし、他の敷地内へ無断で入ることはいけない。しかし、そう唱えているだけでは、犯罪が減らないのも事実である。社会防衛という視点からも、真剣に考える問題だ。

類書に
「子どもはどこで犯罪にあっているか」 
      犯罪空間の実情・要因・対策
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中村 攻 著 晶文社 刊
ISBN:4794964334
定価 1995 (1900+TAX)円

私の簡単なレビューはここにある。


また、直接的な「安全」に関するものではないが・・・。
子どもたちの財布を資本主義社会のマーケットが虎視眈々と狙っている。そのことを改めて考えさせられるこの一冊も見逃せない。「買うために生まれてきた子どもたち」という著者の表現もあながち嘘ではない。

こどもを狙え! キッズマーケットの危険な罠
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ジュリエット・B・ショア 著 中谷 和男 訳 アスペクト 刊
ISBN:4757211902
定価 1995 (1900+TAX)円

様々な広告,コマーシャルによって消費意欲を掻き立てられた子どもたちの「おねだり」という形の手強い「要求」のまえに,周囲の大人達はなすすべもなく立ちつくしている。周囲の大人によって満たされないことを知ると,それらを充足すべくアルバイトをしたり,一部の子どもたちは触法,虞犯行為に流れたりする。
 また,一つの消費欲求が満たされても,次々と新たなものが提示され消費意欲を掻き立てられるため,子どもたちはいつも満足することなく常に欲求不満の状態にいる。
 このような姿で良いのだろうか。このような社会の流れから自分たちの子どもを守るために,正しい消費者となるために,親としてどう行動したら良いのだろうか。
 考えさせられる一冊である。
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by taketombow | 2005-12-03 11:21 | 私の本棚から  

「蝉しぐれ」

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藤沢 周平 著
ISBN: 416719225X 文芸春秋 刊
定価: 660 (630+TAX)円

 藤沢周平の小説は良く読んでいる。しかし、買って読んだのは初めてだ。何となく、暇つぶしや気分転換に小説月刊誌を買って読むとき、掲載されているのでついでに読んでしまう場合が多い。だから、いつも、さほど期待はしていないが、つまらなかったという経験はなかった。

 今回、市川染五郎、木村佳乃という配役で映画化された。ぜひ見たかったのだが、とうとう機会を逸してしまったので、原作にあたった。。

 物語は、東北にある架空の小藩、梅坂藩の組屋敷のある朝の情景から始まる。幼なじみの隣家のお福との淡い恋、友情、藩主の跡継ぎを巡るお家騒動。それらに凛として立ち向かいながら成長していく様子を鮮やかに描いている。
 青春とは、目前の課題に逃げることなく精一杯取り組んでいくこと。そういうかのごとくの、主人公のひたむきさ、生一本さに好感が持てる。
 ふと、井上靖の「あすなろ物語」を思い出した。
ほろ苦くも懐かしい青春の日々、それらを経て少年は青年へと脱皮していく。
 久し振りに読後感のさわやかな作品を読んだ。
 
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by taketombow | 2005-11-18 21:33 | 私の本棚から  

スタインウェイ戦争 誰が日本のピアノ界をだめにしたのか

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高木 裕,大山 真人 著
ISBN: 4896918428 洋泉社 刊
定価: 777 (740+TAX)円



業界の暴露本である。

事実はどうなのかは知らない。自分が「正義の騎士」であり、競合する同業者は「悪」である。それを冒頭から巻末まで、徹底しているからある意味では凄い。

しかし、スタインウェイといえば世界の名器、それを巡るエピソードや、蘊蓄を知ることができるのでそれだけでも、得をした気分になる。
 例えば、スタインウェイにはドイツハンブルク製とニューヨーク製があり、それぞれ価格も違うとか、ピアノの基本的な構造はその殆どをスタインウェイが考え特許を取得したものだとか。

競合相手を悪く書いてばかりいる部分が気になるが、かなり読みやすい。

追加
 この本の記述に関して、現在「名誉毀損」として訴訟になっている。
この本の中で「松葉楽器」としてほぼ名指し同然で糾弾されている「松○楽器」サイド(多分)の人物(ブログ上では氏名不詳)がブログを公開している。以下のコメントをしている方だ。

「スタインウェィ戦争」名誉毀損裁判

 興味有る方は、こちらも見て頂きたい。双方の情報を総合し、初めて、的確な判断ができる。
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by taketombow | 2005-11-07 23:10 | 私の本棚から  

西の魔女が死んだ

不登校はどうでしょう? / なつきのココロ

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梨木 香歩 著
ISBN: 4101253323 新潮社 刊
定価: 420 (400+TAX)円



中学校へ入学して間もなく、まいは学校へ行けなくなった。喘息の発作がきっかけだったが、クラス女子間の人間関係に疲れ切ってしまったのも大きな要因だった。
 暫くの間、田舎に住んでいる「おばあちゃん」(西の魔女)の元で暮らすことになる。英国生まれのおばあちゃんは、若い頃単身で来日し日本人である祖父と結婚しただけあって、考え方が変わっている。自分の考えを押しつけない。全てを自分の意志で決めていく。西の魔女と生活していく間に、次第次第にまいは自分の考えで決めることになれていく。
 
 おばあちゃんとの生活の中で、自信を知り戻し自分を再発見していくまいの成長と、おばあちゃんとの永遠の別れを清々しく描いている。

 思春期の悩みに直面し、そこから抜け出そうと苦しんでいる子どもたちにぜひ紹介したい一冊だ。
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by taketombow | 2005-09-28 01:05 | 私の本棚から  

リピーター医師 なぜミスを繰り返すのか?

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貞友 義典 著
ISBN:4334033113 光文社 刊
定価 777 (740+TAX)円

 最近の医療は大変良くなった。病院は快適だし、医師や看護師を始めとした医療関係者の接客態度も向上した。処方される薬に説明書が付いているのも当たり前になった(勿論そのコストは保険で患者が負担しているのだが)。しかし、これらは表面的なもの、「病気を治す」という医療本来の機能はどうなっているのか、それを担う医師、看護師等、医療関係者の質はどうなっているのかを、医療過誤(ミス)と、それへの対応を通して探った本である。
 本書で扱うのは医療過誤(ミス)であり、医療事故ではない。
 医療は人の命を扱う仕事。患者の様態、周囲の状況によって、どんなに気を付けていても、不可抗力の事故は起きる。しかし、アクシデント(事故)が同じ医師に立て続けに何件も起こる事はあり得ない。もし、あったとしたら、それは、偶然ではなく必然であり、明らかに医療過誤である。医療というには余りにもお粗末で、無責任な医療事故と、それを隠蔽しようとする関係者を糾弾している。
 本や、マスコミで「名医」として話題になっている医療機関でも危ないとしたら、素人である私たちは安全な医療機関をどのようにして選んだら良いのだろうか。
 不安になってきた。
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by taketombow | 2005-09-03 16:59 | 私の本棚から  

顔立ちから子どもを知る―ルイ・コルマンの相貌発達心理学

d0054692_14563094.jpgL.コルマン (著), 須賀 恭子 訳
ISBN:4762824445 北大路書房 刊
定価 2,625 (2500+TAX)円

 「人間は40歳をこすと誰でも自分自身の顔に責任を持たねばならない(元アメリカ大統領 リンカーン)」
 「顔には人生が表れる(NHKメークアップアーティスト岡野宏)」
 「人となりは顔立ちに表れる」と言う。また、「外見だけで人を判断してはいけない」とも言う。
 コルマンは心身は同一の生命力に発すると考え相貌心理学を発達させた。理論化された8種の気質類類型に身体や顔立ちの形態的類型が対応するのは当然だと。

数多くの子どもたちと接する機会の多い、教育・福祉関係者、カウンセラー、心理臨床研究者にとって参考になるかも知れない。
 しかし、ここに上げられたのは欧米系の顔立ちについてである。日本人の顔立ちとは微妙な相違がある。この点は今後も比較研究の継続が必要だろう。
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by taketombow | 2005-08-31 15:56 | 私の本棚から  

教育不信と教育依存の時代

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価格:¥ 1,575(税込)
広田 照幸 著
ISBN:4314009802 紀伊国屋書店 刊
定価 1,575(1500+TAX)円

興味深いタイトルなので、つい手に取った。著者は東大大学院の教授。教育社会学が専攻。
まず、題名に共感、「うん、そうだそうだ」と頷いてしまう。

 今ほど、教育、教育システム、学校、教員、教育基本法・・・等々を「だめだ、だめだ」の大合唱で包囲し批判している時代はあっただろうか。

そんなにだめなら、違うシステムを作ればいい。学校教育に依存しなければよい。なのに、それもしない。ただ批判し過大な要求をするだけ。挨拶をしないのも、食べ物に好き嫌いがあるのも、生活のリズムが狂っているのも、中学生がたばこを吸うのも、箸が上手に使えないのも学校が悪い。

 「もっと、道徳教育の充実を」

ごもっともだ。家庭でできないのなら学校教育が担うしかない。しかし、本当にそれで良いのだろうか。また、やってもなかなか目に見える効果がでないのはご承知の通りだ。
 でも、考えて欲しい。個人の倫理観まで学校教育で教え込み、それが非常に効果的だったとしたら、それこそ、恐ろしい社会になりはしないだろうか。
 教育は、それををコントロールする為政者の思うままになる。一昔前、全体主義国家の一部は、幼児期から国家が子どもたちを教育した。そして、子が親を密告したりする事例が有ったという。文化大革命の頃隣の国では盛んにそれが行われたことは、記憶に新しい。今でも、日本人の拉致で問題となったあの国などは、そうなのかも知れない。
 今のままの教育制度ががベストとは思わない。しかし、倫理観、道徳観は親が自分の行動を通して教えたいものだ。
 国家の役割は、その積極的なサポートに徹するべきだとだと思う。

本書の内容の抜粋(私なりの理解で)は次の通りだ。

まず、現状認識から疑問を呈している。
メディアの言う「教育の荒廃」は真実かという点だ。
殺人の年齢別構成比、年齢別窃盗犯検挙数、粗暴犯検挙数のどれをとっても、数は減っている。その殆どは減ってきている。ことに粗暴犯などは、1960年代の4割弱になっている。つまり、最近の「学校の荒れ」は、青少年の問題というよりも、極端な事例や深刻な事例がマスコミでクローズアップして取り上げられる時代になったことの結果だという。
 報道されるほど荒廃しているわけではない。しかし、それらの極端な事例を取り上げ、現状を批判し対応を要求する。それらを教育界が受け容れることにより、学校、児童生徒、社会それぞれが身動き出来ない状態になっている。

最近の教育批判は自分のもっている理想と比較して批判している。理想と比べればどのような現実でも批判の対象としてしか見えない。また一方では教育への過度な依存がある。
教育批判に対する現代特有の3つの問題
・教育の量的な不足から別の問題(時には全否定)への変質
・政治的構図の不明確化
 ポジティブな部分を評価する勢力がなくなり、「袋叩き状態」になった。
・「ミクロ的な問題」の専門家が増え、批判構図に影響を
我々が為すべきこと
・「教育で成し得ること」の不完全性を了解する。
・「教育をよくする」とは<理想=善>と<現実=悪>との戦いにしない。
・「リアルで等身大の教育像」から出発し過度な不信と依存を振り払い考えていく必要がある。

 この本の論理展開は、同じ著者の「日本人のしつけは衰退したか」(講談社現代新書)と同じだ。しかし、日常的に子どもたちと接している関係者で、子どもや保護者の変化、家庭や地域の教育力の低下を実感し危機意識を持たない人は極めて少数だろう。それらの人へのデータと実感とのずれへの説得力には、やや物足りない面がある。また、「家庭」が従来の教育機能を持たない事例が増え始めてきている今、学校が「過度な依存」を振り払うことは現実問題としてできるのかという懸念が残る。

ぜひ、ご自分で読まれると良い。
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by taketombow | 2005-08-29 21:50 | 私の本棚から  

科学で見なおす体にいい水・おいしい水

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岡崎 稔, 鈴木 宏明 著
ISBN:4765544427 技報堂出版 刊
定価 1,890(1800+TAX)円


 水を巡るインチキくさい話はいくつでもある。また,それらインチキ臭い商品の提灯持ち的な書物も数多く発行されている。
 この本は、浄水場等の浄水プラントを設計している技術者が、それらの議論から距離を置き,中立的、科学的な立場で記述しようとしている。
 考えてみれば、水のクラスターが違うとか,波動が込められているとか分子構造が違うとか,訳の分からん効能を並べるだけで,一つ数十万円もする浄水器や整水器が飛ぶように売れるご時世だから、このような本も必要だと思う。
 ふだん,毎日飲んでいる水道水を見直すきっかけになる。 私は水道水を不味いと思ったことはない。
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by taketombow | 2005-08-27 11:24 | 私の本棚から  

絵手紙 うまれてきてよかった

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河合 美佐, 島田 一恵 著
ISBN:4806804487 柘植書房新社 刊
定価 1,575(1500+TAX)円

 私が購読している中日新聞の日曜版には、毎週絵手紙の欄がある。絵手紙の魅力は、短く気の効いたコメントと素朴な絵との組み合わせにあるのだろう。
 この本は、それぞれ「心臓弁膜症」「多発性硬化症」という難病を抱えた二人が互いに励まし合う為に交換した絵手紙を一冊の本にしたもの。病状の急変、悪化そして回復。自分の身体の変化に一喜一憂しながらも努めて明るく前向きに生きていく姿に命の輝きを見るようで共感を覚える。おふたりとも、この絵手紙がきっかけで症状は良い方向に向かっているとか。
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by taketombow | 2005-08-27 11:04 | 私の本棚から