カテゴリ:私の本棚から( 48 )

 

少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から

d0054692_21372580.jpg筑摩新書 藤川 洋子・著
ISBN:4480062343 筑摩書房・刊
価格:714円



 青少年の犯罪・非行は動機の理解が困難なため、その質や量に比しセンセーショナルに扱われがちと著者は指摘する。論理的な動機はもともと存在せず、精神医学的、脳科学的なアプローチから説明できる部分もかなりあるのではないか。不可解な点が多いからと、大人達が理解しようとすることを止めてしまうことが心配だと。子どもたちを導くべき大人が自分の手で子どもを育てることをやめてしまう傾向が見えてきている。社会が子どもを「商品」としてしか見なかったり、距離を置くようになったり、無責任な批判を繰り返すだけだったり、子どもを持とうとしなくなったりすると、これからの日本はどうなっていくのだろうか。
[PR]

by taketombow | 2005-07-03 21:33 | 私の本棚から  

自閉症の子を持って

d0054692_21434952.jpg新潮新書 武部 隆・著
ISBN:4106101181 新潮社・刊
価格:714円(税込)

我が子が「自閉症」と診断されたとき親のショックは相当なものだろう。筆者は長男が2歳の時軽度の「自閉症」と診断された。その主治医の「適切な訓練を受ければ小学校入学時までに健常児と同じレベルになる」という言葉を信じて、奮闘が始まった。
 我が子によりよい教育を受けさせたいという親の気持ちはよく分かる。それを現実の行動として実践し実現させた記録。様々な障壁を乗り越えたその熱意はすばらしいと思う。障害児をもつ親にとっては勇気づけられる本だ。著者の熱意・行動力はもちろんだが、その職業(時事通信社記者)も微妙に効果的に働いたと思う。
 しかし、受け入れる側にとっては「大変だろうなあ」と思う。制度として、養護学校、障害児学級というものがある以上、通常学級に障害児が入学しても、原則として教員の加配はない。「担任一人に任せきりにせず、学校全体で支援を」とは言われるが、今時、教員が余っている学校なんて殆ど無い。嘘だと思ったら、試しに授業中に地域の学校の職員室を覗いてみるとよい。業務士(校務員)事務員しかいない学校はざらである。担任以外の教師は管理職を含めて、キレた児童、教室を脱走した児童、けが人病人の対応に追われ校内を走り回っている。結局、事実上担任一人で、抱え込むことになってしまうのだ。なぜ加配がないかというと、就学指導により「特別に支援が必要な児童は、障害児学級や養護学校へ行っているはず」というのだ。普通学級で障害をもつ児童生徒の受け入れをためらう理由の一つがここにある。だから、このように「特別支援」が必要な児童生徒を受け入れ該当児童の保護者の協力が得られないとき、しかも授業を維持するためにどうしても他の教師の補助が必要なときは、本来の職務を一時中断して駆けさせているのだ。つまり、自分の学級を自習にして駆けつけたり、本来(書類上は)他の指導をしている筈の教師を融通したりしているのだ。
 もちろん、受け入れ態勢がないからといって拒否すべきではないし、拒否できる社会情勢ではない。だが、その無理を学校現場だけに押し付けている現状は早急に改善すべきである。
重度の障害児の受け入に当たっては、人的な配慮ができるよう、社会的なコンセンサスの形成が一刻も早く望まれる。
[PR]

by taketombow | 2005-07-03 21:20 | 私の本棚から  

発達障害かもしれない 見た目は普通の、ちょっと変わった子

d0054692_12161769.jpg
光文社新書  磯部 潮 著
ISBN:4334033016
光文社・刊  定価:735円

類書はいくらでもある。内容も似たり寄ったりだ。少し違う点は、これら発達障害をもった子どもたちの心の中はどうなのか、彼らへの接触の経験から内的体験をできるだけ再現しようとしている点だと思う。我が子はもしかしたら・・・という不安を持っている親にはもちろん、これらの子ども接する機会の多い教育関係者にも参考になる本だ。
[PR]

by taketombow | 2005-07-03 09:45 | 私の本棚から  

一斉授業の復権

d0054692_9331465.jpg久保 斎 著
ISBN490133061
子どもの未来社・刊   定価(1,995) 円



個別化・個性化教育への最近の流れは、一斉授業を「一昔前」の授業形態としてしまった。しかし、一斉授業はそんなに悪いのか、一斉授業の良さを見直すべきだと筆者は指摘する。「個の学びと集団の学びとが両立する」のが一斉授業であると。具体的な授業方法を提示しながら、一斉授業の実践的意義を展開していく。「授業」というものを改めて見直すには好適な本だと思う。
[PR]

by taketombow | 2005-07-03 09:34 | 私の本棚から  

オレ様化する子どもたち

d0054692_726532.jpg

中公新書ラクレ171 諏訪 哲二 著
ISBN4-12-152171-3   
中央公論新社・刊   定価(740+TAX) 円

 著者は「学校崩壊」の川上亮一氏と同じ「プロ教師の会」代表。
現代の子どもは、一昔前の子どもではない。何時までも漫然と一昔前の子ども観で接しているから、様々な問題が生じているのだと。

 躾らしい躾も、教育もなされぬ儘に大きくなり、「個の尊重」「自由」だけが大手を振って通り、何ら中身のないまま(社会に関わる規範意識は幼児と同等かそれ以下のまま)、一人の「個」が確立した個人として権利を要求する。それが「オレ様化」した子どもだ。授業中の私語を注意しようものならば、この「オレ様」に注意するとは何事だと、突然キレて暴れまくる。

 私も、教師が級友の荷物を探り盗っているのを現認したのにも関わらず、本人が完全否定し保護者が子どもをかばう事例に遭遇し、唖然としたことがある。

 この本は、子どもや保護者のそのような問題点を具体例を示しながら論じている。更に尾木直樹、上野千鶴子、宮台真司、水谷修氏ら教育論についてもバッサバッサと痛快に論じている。

 「そうそう、そうなんだ」思わず相づちを打ちたくなるような箇所は随所にある。学級・学校での様々な困難の原因を、子どもたちの軽微な障害(ADHD,LD,アスペルガー等)に求めるのでなく、それまでの育ち方に求め、家庭での保護者の自覚を促している。

 しかし、読み終わってみて物足りなさが残る。

じゃあ、これから私たちはどうすればいいのか。その処方箋が描けない。

子どもは変わった。学校はなかなか変われないでいる。家庭も地域もその教育力は低下した。

それでは、だれが、なにをすればよいのか。新書版で僅か40 ページ足らずの本だが、中身は余りにも重い。
[PR]

by taketombow | 2005-07-02 07:31 | 私の本棚から  

「自閉症裁判」 レッサーパンダ帽男の罪と罰

 d0054692_14313938.jpg    佐藤 幹雄 著
ISBN4-89691-898-3   洋泉社・刊     定価(2200+TAX) 円

2001.4.30午前10時、東京浅草 雨降りの日
 19才の女子短大生が、レッサーパンダの帽子を被った男にナイフ
で刺され失血死した。

 白昼、180cm を越す大男が若い女性に馬乗りになり執拗に刺す。その衝動性と異様さから、怪物のような形相をした極悪非道な男を想像するだろう。

 しかし、この本から浮かび上がってくるのは、身体だけ大きいが決して視線を合わせられない気弱な男、知的障害を持ち金銭管理ができないため、自分の収入は勿論、末期ガンの娘を働かせたその収入も、医療費もパチンコで使い切ってしまう父親。家計を支えるため、末期ガンでありながら働き続けなければならなかった犯人の妹。という犯人を巡る余りにも悲惨な一家の姿だった。
 何度となく読むのを止めようかと思った本だ。内容がくだらないとか、表現が稚拙だとか言うのではない。暗いのだ。救いがなさすぎるのだ。そして悲しいことにこれが現実なのだ。

読了後

「じゃあどうしたら良いんだ!」

と大声で叫びたくなる。

 一つの犯罪には被害者の心情、加害者の更正、社会防衛等様々な面を考慮して刑罰が決められる。しかし、加害者が障害を持っていると、その責任能力の有無が争点となる。
 責任能力が無いと判断された場合は、刑罰は科せられず「誰も悪くない」「誰も責任を問われない」という状態になる。それを避けるために、検察は責任能力の立証に躍起となる。警察もマスコミも犯人の障害、養護学校卒業という事実は極力隠した。

そこに無理は無かっただろうか。

障害の有無に関わらず、罪は償わなければならない。しかし、少なくとも自分のしたことの善悪くらいは、分からせた上で処罰すべきと筆者は指摘する。

 犯行から約1年後、犯人の妹は全身に転移したガンのため、24才の生涯をひっそりと閉じた。

「今まで生きてきて何一つ楽しいことは無かった」

そう漏らしてい彼女だったが、弟の起こした事件をきっかけに、周囲に支援の輪が広がって、障害者認定、医療保護、生活保護等の手続きが取られ、父親との世帯分離がなされた。

自閉症、障害者家庭への理解と支援のあり方について考えさせられる本だ。
[PR]

by taketombow | 2005-05-22 14:31 | 私の本棚から  

 「問題な日本語」 

d0054692_170617.jpg 
           北原 保雄 著
ISBN4-469-22168-6 大修館・刊    定価(800+TAX) 円

 以前他のMLで話題になった本だ。先日図書館で見かけて呼んだが元に置きたくて結局購入した。

最近このような使い方に接しないだろうか。

・「こちら ○○○○になります」
      ~~~~~~~~
     → 「になります」の使い方

・「○○○の方をお持ちしました」
  ~~~~~~~
     → 「○○○の方を」の使い方

・「全然いい」
 ~~~~~
     → 「全然」は否定語とペアで使うのでは?

・「理由は特にないです」
  ~~~~
     → 「ない」と「です」の組み合わせ

・「真っ茶」
 ~~~
     → 「真っ黒」「真っ白」「真っ赤」以外にも使えるのか。「真っ紫」「真っピンク」は?

・「台風が上陸する可能性があります」
  ~~~~~~~~~
「可能性」とは「好ましい事態になる見込み」のときに使うのでは?

等々 最近目につく用例についての解説が載っている。実用として役に立つことは言うまでもないが、「ことば」についての蘊蓄としても興味深い。

※ 名詞の前に「お」「ご(御)」をつけて「ていねい」な気持ち を表す用例がある。この使い分けのきまりはご存じだつただろうか。
 
 おしり とはいうが ごしりとはいわない。
 ~    ~
 同様にご結婚とはいうが お結婚とはいわない。
 ~      ~
 私たちは知らず知らずのうちに、一定のきまりに則ってことばを使い分けている。そのルールからはずれた言葉に接したとき違和感を感じるのだろう。
[PR]

by taketombow | 2005-05-21 17:09 | 私の本棚から  

「眠りを奪われた子どもたち」 

d0054692_1714643.jpg       神山 潤 著
岩波ブックレット NO.621
ISBN4-00-009321-3 岩波書店・刊    定価(480+TAX) 円

 子どもたちが「夜更かしをする」という問題は、今に始まったものではない。しかし、3歳児の半分が午後10時を過ぎても起きている(1999.7 東京杉並区 P.5 )という数字には唖然とさせられる。

この本は、それらの実情を踏まえ、なぜ夜更かしはいけないのか医学的な立場から解説している。同様に早起きが私たちの身体にもたらす効果も分かりやすく解説する。

子どもたちや、保護者話しをするときのネタ本としても使える。

さわりを少しだけ

・人間の体内時計は24時間より少し長い。人は毎日微調整し生活している。その微調整のための同調作用のきっかけとなるのが朝の光である。
・抗酸化作用があり性的成熟の抑制作用がある、メラトニンは成長期に分泌されるが、夜明るいと分泌は抑制される。
・日本の中学生は、世界的にも睡眠時間が短い。


別の調査で、日本の子どもの学習時間は世界でも少ない方になっていた。
 今の子どもたちは、睡眠時間、学習時間、友達と遊ぶ時間も少なくなっている。大半の時間がテレビと、テレビゲームに費やされているとしたら、なんともやり切れないことだ。

 子どもたちに見せる価値のある番組は、さほど多くはないと思っているのにだ。
[PR]

by taketombow | 2005-05-20 17:10 | 私の本棚から