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でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相

でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相_d0054692_1613594.jpg書名:でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相
著者:福田 ますみ (著)
定価:1400+tax ¥ 1,470 (税込)
発行:新潮社 (2007/1/17)
ISBN: 978-4103036715


「現代マスコミ」と「官僚機構」の体質が生み出した冤罪を扱う。

 自分の先入観をもとに、十分な裏付け取材もせず、警察や関係者の発表だけで記事化する記者、「頭を下げれば済むだろう」とばかりに、きちんとした事実確認もせずひたすら事態収拾だけに走る関係者。
 このような無責任体質が、一人の教師を「殺人教師」とまで呼ばれる冤罪事件の被告に仕立て上げた。
 一昔前は、たとえ教師側に過失があっても、頭を下げれば解決した。だから、たとえ(学校側に)過失が無くても「頭を下げて相手の気が済むなら・・」という雰囲気が現場には残っているかも知れない。
 しかし、今は違う。事実は事実、誤解は誤解、曲解は曲解と正確に確認しておかないととんでもないことになる。

 その、典型的な例となる事件だ。

 事件が起きると被害者と加害者が生じる。そして、その事件が「いじめ」や「体罰」だったら、どうしても、報道が「被害者?」寄りになるのは仕方がないことだろう。しかし、それが虚言癖のあるクレイマー保護者によるものだとしたら問題はとんでもない方向へ発展する。地域住民なら誰でも知っているような虚言癖、それを見抜けず主張を鵜呑みにしてしまった報道機関の側には大きな責任がある。 しかし、丹念な周辺取材により「被告」となった教師の潔白、「原告(保護者)」の主張が全くぬれぎぬだったことを明らかにしたのも、同じ言論界に身を置く人間だ。損害賠償請求公判の場で、原告の主張の支離滅裂さ、ろくな診察もせず、PTSDと診断した大学医学部精神科医師の無責任さが露呈する場面の描写が小気味良い。

それにしても、マスコミ誤報による冤罪はよくあるが、その後の責任あるフォローは余り見たことがない。この事件も、この本が出版されなかったら私は知らなかっただろう。

 いつものことながら、この事件も火を付けたのは、あの全国紙A紙だ。当然のこととして「殺人教師」と烙印をおしたまま知らぬ振りだ。 地元紙も同様。

 この著者による
「新潮45」平成16年1月号「『教師によるいじめ訴訟』全真相」
「中央公論」平成18年1月号「福岡・小学生体罰事件 稀代の鬼教師か、冤罪か」
も併せて読むと良いだろう。(本書とほぼ同じ内容だが)

 反対の立場を取っている「週刊文春」の記事も読むと争点が明らかになる。

 しかし、この被告教師の頼りなさは何だ。証言が心許ないから、周りが支えきれなくなるのも事実だろう。

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by taketombow | 2007-02-04 16:21 | 私の本棚から  

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